サッカー記事。続き

2004年7月27日
2004/07/27 (産経新聞朝刊)
サッカーアジア杯 中国の反日行動、大国意識と表裏噴き出した異様な“ブーイング” ( 7/27)

【北京=野口東秀】中国・重慶市などで開かれているサッカー・アジア杯が極めて偏狭な中国の「愛国主義」に彩られている。

日本対オマーン、日本対タイ戦では日本選手に対する激しいブーイングが会場を覆ったほか、二十四日には試合終了後に日本チームのバスが中国人観客に取り囲まれた。

この「日本嫌い」の背景には、低下する共産党の求心力を高める手段として江沢民前政権下で顕著になった愛国主義の強調がある。

二十日の日本対オマーン戦での中国人の観客の声援は大部分がオマーンに寄せられ、一部の観客は反日スローガンまで叫んだ。二十四日の日本対タイ戦でも日本選手への露骨なブーイングが終始目立った。

タイ戦では観客席の日本人に物が投げつけられたほか、日本選手のバスが中国人観客らに取り囲まれる騒ぎもあったという。

田中誠選手は「国歌吹奏のときから何か違ったような雰囲気があった。反日感情が強いのかなとは思った」と語った。

田嶋幸三・日本サッカー協会技術委員長は「試合中のブーイングは仕方がない」としながらも「日本から足を運んだファンが物を投げられたりして楽しくサッカーを見られないのは問題」と遺憾の意を示した。

中国中央テレビは日本の二試合とも中継せず録画を深夜に放映したが、これについて同局関係者は「単に番組の編成の都合であり、一カ月前に録画放映は決まっていた。二十八日の日本対イラン戦は中継する」と語った。

しかし、重慶市は第二次世界大戦で旧日本軍が爆撃した都市でもあり、ネット上では試合開催の二カ月前から「(試合に合わせて)日本国旗を焼こう」など反日行動を呼びかける書き込みが寄せられていたとされ、「反日」の広がりで国際的イメージが悪くなることを警戒した当局側が中継を規制した可能性は否定できない。「南方体育報」もこうした点を示唆している。

現在もネットの掲示板には「重慶人民は日本選手団に抵抗せよ、爆撃を忘れるな」「日本選手団に歴史の写真を見せて勉強させろ」などの書き込みが存在する。

歴史問題だけでなく尖閣諸島や沖ノ鳥島、ガス田開発など最近の東シナ海・西太平洋における日中間の紛争についても、日本選手団に対して抗議行動を起こそうとする動きもみられたという。

「反日」は中国共産党が江沢民時代に愛国教育を強化してきたことと表裏一体の関係にある。

中国は市場経済化の加速で社会主義イデオロギーに代わる新しいイデオロギーを必要とし、「愛国主義」を全社会的に強調するようになった。腐敗と経済格差の広がりで失われた党の求心力を回復する狙いもあった。

「反日」を担うのはこうした愛国教育を受けてきた世代が多く、「大部分の中国の大学生は日本が好きではない。日本という言葉から大学生が示す反応は憎悪である」(中国青年政治学院の教授)との指摘さえみられる。

「中華民族の復興」との言葉が江沢民時代にはみられたが、中国は従来の対日コンプレックスと、経済成長と核を保有する軍事力による大国としての自信の双方が入り交じり、日本への感情を複雑なものにしている面もある。

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