「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
     平成16年(2004)8月23日(月曜日)
         通巻 第893号  

面妖なり、軍が党の顔色を窺うのならともかく、党が軍に阿諛追従

江沢民チルドラン(レン)の元凶は、この「軍党逆転」の悲劇に存在するのではないか

中国は国家に従属する軍隊を持たない。
「人民解放軍」は中国共産党に従属する。
だから中国は近代国家ではない


その軍が、党の顔色を窺わなくなった。あべこべに党が軍の顔色を窺うという面妖な現象が、いまの中国の力関係のアンバランス、奇矯な政治状況を象徴している。

党に所属する軍隊などという異形さは世界常識に照らせば異常極まりないが、(つまりそうである以上、一党独裁であり、中国は近代国家たり得ない)、江沢民は軍に阿諛追従して13年間、いつのまにか、軍の高層幹部を巧妙な人事で掌握し、軍の主任ポストを奪い、昨今は好きなままの人事を展開、自分のボディガードまで将軍に昇格させたから、国内の失笑を買った。

そうならば、制度的視点からいえば、あの巨大な人民解放軍は江沢民の私兵?

江沢民の上海の“豪邸”は護衛が幾重にも張り付いていて、最近、撮影に行った日本人カメラ(マン)によれば、写真撮影をすると拘束され、フィルムを抜き取られたそうな。

首相官邸を撮影して、注意される国家はイスラエルなどあるかもしれない。それは安全保障上の理由である。
小生自身、エルサレムで首相官邸を撮影したら警備兵が飛んできた。ただし、フィルムは抜き取られませんでしたがね。

「前」の国家主席の私邸である

中曽根や森喜朗の自宅を写真に撮って逮捕されたら日本の新聞は騒ぐでしょうね。それなのに、この江沢民の私邸を撮影して、一瞬とはいえ、拘束されそうになった「日本人ジャーナリスト」のことを、日本のマスコミ、一行も書かなかった。

要するに江沢民は依然として「皇帝」なのである。

ともかく党は軍を指導し、軍は党をまもるために(人民を弾圧し)存在する。
しかし軍はアルバイトのビジネスに忙しいし、党は「権力の市場化」(何清蓮)に、これまたおおわらわ。党も軍も社会主義革命の理想をどこへ捨ててしまったのだ。

あまつさえ、毛沢東以来の伝統を誇ってきたはずの共産党が、党の所属でしかなかった立場の軍の顔色を窺うというポンチ絵。要するに国家主席兼党総書記たる胡錦濤が、軍をにぎる江沢民に頭が上がらないという錯綜構造!

この状況を矛盾と感じない中国の知識人が、日本を批判する資格などあろうはずがないではないか。

この“党軍錯綜”という現状は、中国共産党史に対しても歴史的禍根を残すだろう。


さてさて...

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