また、ちょうどいたもんだナァ。
2004年9月12日(産経抄)
▼きょうが初日の大相撲秋場所でぜひ大奮闘を期待したいのが新入幕の露鵬(二四)と新十両の白露山(二二)だ。子供ら数百人がテロの犠牲になったロシア・北オセチア共和国。その首都ウラジカフカス生まれで外国人初の兄弟関取だ。
▼テロ現場のベスランはウラジカフカスからわずか二十キロ。兄弟は地獄絵と化した学校にもしかと見覚えがあり、露鵬が鍛えられたレスリング道場時代の先輩の友人が亡くなったという。日本の新聞に大きく写真が載った女児救出中の男性は、自分たちを応援してくれた近所のおじさんだった。
▼チェチェン紛争は常に身近にあった。ウラジカフカスでも市場や繁華街で爆弾テロが頻発していたが、今回の大惨劇にはさすがの巨漢兄弟も色を失った。ソ連が崩壊し、自分たちの能力を異国で発揮できる自由を得た分だけ、カフカスでの危険は増している。
▼「東方を征服せよ」を意味するウラジオストクと同様、ウラジカフカスは「カフカスを征服せよ」と命名されたという。十八世紀に膨張主義につかれた帝政ロシアはここを拠点にカフカス支配を進めた。以来、宗教対立も相まって諸民族への激しい弾圧と抵抗が続いてきた。
▼そんな歴史的経緯もあってか、この地域では格闘技が強く、人気も高い。北オセチアの南のグルジアからは前頭筆頭に出世した黒海もいる。アテネ五輪では露鵬と同じ道場で練習したレスリング仲間が三人も金メダルに輝いた。
▼死傷した子供の中にはきっと、「第二の露鵬・白露山」を夢見ていた少年も多かったに違いない。故郷の遺族や家族のせめてもの癒やしに、兄弟には「ロシアの若・貴」を目指して頑張ってほしい。露鵬の新しい化粧まわしにはロシア語で「夢」の文字が躍っている。
ふぅ〜ん。
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