(中西輝政非公認ファンサイト)

「拡大抑止」は可能か?

日本に核武装は必要ない、という意見の根拠のひとつとして、日米安全保障体制を堅持すれば用は足りる、というものがある。

アメリカによる「核の傘」は、有事にあたって、果たして有効に機能するのだろうか。この問いは、すでに冷戦時代の欧州において徹底的に議論された。

(旧ソ連は支那なんぞ目じゃないくらいの装備)

ハンブルクかブリュッセルがソ連の核ミサイルによる攻撃、あるいは威嚇を受けたとする。このとき、アメリカは本当に核兵器を用いてこれに反撃するだろうか、と欧州人は繰り返し問うた。もし反撃すれば、アメリカ自身も、ニューヨーク、ワシントンに報復攻撃を受けるリスクを負うのである

結局、欧州の結論は「否」であったようである。だからこそ、英国、フランスは自前の核にこだわることになった

九五年、就任直後のシラク大統領は、フランス製品不買運動などで世界中に盛り上がった国際世論に正面から抗して、南太平洋ムルロア環礁での核実験を敢行した。日本の大蔵大臣、竹村正義がアロハ姿で反核デモに参加し、内外の失笑を買ったのはこのときである。

目前に迫ったCTBT(包括的核実験禁止条約)の批准を拱手傍観すれば、自らの核兵器は永久に旧式のレベルにとどまらざるをえない。当時のフランスには、そのことへの焦りがあった。来るべき統合欧州がアメリカの風下に立たされないために、是が非でも自前で最新鋭の核兵器を持たねばならない、とシラクは確信したのである。

日本ではフランスの実験ほど騒がれなかったが、ほぼ時を同じくして、中国も”駆け込み核実験”を行い、その結果、アメリカ東海岸を射程に収める大陸間弾道弾「東風」三〇号シリーズへの核弾頭の搭載を可能にしたのである。また台湾海峡に撃ち込まれた短距離、中距離のミサイルに搭載する軽量核弾頭の技術も、このときの実験成果を踏まえたもの、とされる。

フランスと中国は「遅れた核大国」であった。だからこそ、九〇年代半ばの”追い込み”には必死だったのである。

九五年、NPT(核拡散防止条約)は、無期限延長されているが、皮肉なことに、その直後から、核はむしろ広がりを見せ始めた。九八年にはインド、パキスタンが相次いで核実験を行い、同年八月には、北朝鮮の中距離弾道ミサイル「テポドン」が、日本の上級を通過し、三陸沖に着水した。

結局のところ、アメリカがいかに世界を奔走し、軍事力を含むその影響力を行使しようとも、核拡散への流れを完全に封じることは出来ないだろう。残念ながら、核の脅威は今後も世界に広がり続けると考えるべきである。

また、「拡大抑止」、つまり超大国が同盟国の安全を守るために核を用いるという選択は、冷戦構造のような、完全な二局対立の状況の下でしか高いレベルの信憑性を享受することはできない

いまの日本は共産主義陣営に取り込まれる危険に直面しているわけではない。アメリカには、自らリスクをとってまで日本を守る根拠が希薄になっている。

しかも、先に触れたヨーロッパ人の議論が端的に示すとおり、

「拡大抑止」は冷戦構造下ですら、本質的には信憑性の疑わしいものとされ続けたのである。

そのことは銘記されるべきである。

 やはり答えは一つしかない。

核には核を持って応じる以外に有効な手だては見出し難いのである。

核兵器を使用すれば、確実に自らも同様の報いを受ける。そういう脅威を相手に与え続けない限り、つまり

「相互確証破壊」の状況を形作らない限り、本質的に自らの安全を担保することはできない

アメリカ以外の全ての核保有国が、必死の思いで核の選択に踏み切った根本的な動機はそこにある。

もちろん、北朝鮮、中国をはじめとする周辺国の核兵器の脅威に対して、アメリカの「核の傘」が全く無意味である、などと主張するつもりはない。核抑止には「実存抑止」(核の存在、それ自体に一定の抑止効果がある)という考え方がある。

アメリカは守るかもしれない。守らないかもしれない。今のところ、いずれとも決め難いが、中国の核ミサイル戦力の向上などにより、時間が経つにつれ、後者(守らない=自国民を狙う核ミサイルの危険は引き受けない)の蓋然性が高まるという一般的趨勢がある。それが日本の置かれた現実である事を直視しなければならない。

(ジリ貧だよ、ってことネ)

ガロワ戦略の画期性

もし、いま日本が核兵器を保有しようとするなら、どれほどの時間と金がかかるのだろうか。じつに心もとない話であるが、従来、専門家の間で、抗した議論がほとんど行われてこなかったために、確かなところは誰にも言えないのである

(あれ?「二ヶ月でできる!」てなこと、どなたか仰てませんでしたかね?)

ただ少なくとも、先ほど触れた小沢一郎氏のコメントほど実際は簡単なものではないだろう。いくら燃料用のプルトニウムを大量に保有していても、それは爆弾用ではない。核弾頭に使うには相当な処理のプロセスを経なければならない。ミサイル、潜水艦といったプラットフォーム、つまり核を配備する付帯的な軍備のシステムも必要となってくる。


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