現代コリア コラム
内憂外患(2004.9.29)
佐藤勝巳
北朝鮮から自由や食糧を求める脱北者の問題が東アジア全体に深刻な影響を与えだしている。9月1日北京の日本人学校に脱北者29名が亡命を求めて飛び込んできたのが顕著な例の一つである。
7月下旬にはベトナムから400名以上の大量の脱北者が韓国に移送された。北朝鮮の祖国平和統一委員会スポークスマンは、脱北者を受け入れた韓国政府を指して、「わが体制を崩壊させようとする最大の敵対行為」と激しく反発、8月上旬に予定されていた南北閣僚会議などの交流を停止した。
前述の29名の脱北者もいずれ韓国に移送されるであろう。するとまた北朝鮮は反発し、交流など止め、自分で自分の首を絞めかねない。
現在、脱北者は韓国に5800名定着していると言われている。まだ実態は不明であるが、相当数の脱北者が中国などに潜伏し、韓国入りを窺っている。
このように脱北者問題は南北対話にも直接影響を与えると同時に、北朝鮮と接する東アジア諸国との関係にも緊張を作り出し、孤立化を深めている。
北朝鮮の祖国平和統一委員会がいう北朝鮮の体制崩壊にも繋がりかねない深刻な様相となってきた。
われわれは、1989年ベルリンの壁が崩壊した数年前から、東独に於いて現在の北朝鮮と似た現象が起きていたことを記憶している。
北朝鮮は、1984年から社会主義の根幹をなす計画経済を立案することが出来ず計画を放棄し、今日に至っているのだ。
また、北朝鮮当局が、「闇市」を公認して久しい。ということは需要と供給によってモノの価格が決定されるという、実態としては資本主義経済と変わらない状態になっている。このように社会主義計画経済はとっくの昔に崩壊しているのである。その上絶対的モノ不足に悩まされ、モノの値段は高騰し続け、国民の生活難は日を追って厳しくなっている。他方、貧富の差が拡大し、社会秩序が乱れ無政府状況に近い現象が出現している。
朝中国境に鉄条網や木の柵を張り巡らしているのに脱北者が後を絶たない事実は、国境警備の軍人が買収されて脱北に協力しているからである。
金正日政権はこれに手こずって、警備隊をひんぱんに交替させだしたというが、脱北者から渡される賄賂は軍の中枢部まで上納されている。
この一点だけをとっても体制は崩壊し始めているといえる。
次に、今まで金正日政権への最大の支援者であった盧武鉉政権が、経済政策の失敗から、北朝鮮への支援どころか、政権の土台そのものが揺らぎ始めてきた。
こう見てくると、金正日政権は、カネが取れるのは日本しかない、しかしそれを実現するためには拉致と核を解決しなければならない、と考えるであろう。
事情を知らない小泉首相が「一年以内に日朝国交正常化」などと言っていくら太鼓を叩いても、世論がこれを受け入れる筈がない。
金正日が死亡したと言っている、8名プラス2名計10名の被拉致者の再調査を、小泉首相に約束したのが5月22日。すでに4ヶ月が経過している。未だ調査結果が出てくる様子はない。
調査結果も出ないのに、「日朝正常化交渉」では世論が許さない。結局、11月の米大統領選挙までは拉致をはじめとする日朝関係は、たとえ実務者協議が開かれたとしても大勢(たいせい)は動かないと推定される。だから金正日が欲するカネも食糧も手にする可能性は低い。この状況が後継者問題などとも絡んで、国内矛盾は着実に拡大していくであろう。
軍は、高英姫の息子を担いでいるといわれている。従って、高英姫の死亡という状況は、この勢力にとって大きな打撃となる。反対に金正男を担ぐ勢力は、更に勢いづくであろう。
後継者獲得闘争に敗れた方は、一生うだつが上がらなくなる。何がなんでも勝たねばならぬ。
金正日は、後継者に高英姫の息子を決定しているとの話も伝わってきているが、これからは脱北者問題とは関係なく宮廷内での熾烈な闘争が展開されるであろう。
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