(大前研一氏メルマガ)
「ごく一部」の影響を受ける原油価格のカラクリ
NY市場で、原油先物の高騰が続いている。
今月1日のニューヨーク・マーカンタイル取引所の原油先物相場は、ナイジェリアの政情不安などで続伸し、1バレルにつき50ドル12セントと、終値ベースで初の50ドル台を記録し、取引を終えた。
ハリケーンの被害を受けた米国の石油供給力も低迷しているとの見方もあると同時に、現在の「原油価格」決定の仕組みが見え隠れする。
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●わずか「0.6%」が全体の価格を決める不可思議●
原油先物価格が高騰し、先日開催されたG7ではOPECに増産要請が出されました。
まず始めに言っておきますが、この要請は「お門違い」です。
アメリカや日本のメディアも誤解している点が多々あるので、今回の価格高騰を「原油市場の構造」を踏まえる良い機会として、統括的に紐解いてみましょう。
これまで原油価格は、1バレル20ドルぐらいで推移していたので増産するインセンティブはありませんでした。
これが上昇し、40ドル台が続くようになれば、代替エネルギーや代替井戸を活用する道を皆、模索し始めます。
そして50ドル台になったとする。でもここで新たに井戸を掘ったり、閉鎖されていた井戸を開けたりすると、またたく間に30ドル台くらいに下落するものです。
現在は代替エネルギーも十分あるため時間の問題さえ片付けば、価格が長期的に高騰し続けることはありません。
まずこの点を理解しておいてください。
今回の米国産WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)原油の先物価格の推移をみると、7月あたりから40ドルを超え始め、8月半ばで一旦落ち、また9月中にハリケーンの影響やナイジェリア政情不安などで上がっていきました。
注目したいのは、デマンドによって上がっていってるのではなく、ニュース報道(!)によって上がっていってしまう点です。
さらに「OPECに増産要請を出すこと」がいかにお門違いであるかを説明します。
今回対象となっているのは、ウエスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)という油。米テキサス州沿岸部で産出する原油です。
じつはこれ、日産100万バレルしかないので、7000万バレルという世界の1日あたりの総生産高からみると0.6%にすぎません(!!)。
しかし1983年、ニューヨークの先物市場であるNYマーカンタイル取引所(NYMEX)に、石油先物として上場しています。すなわち、世界の総生産高からみると0.6%にすぎない先物の値段が高騰しているのです。
総生産高は世界の0.6%なのに、じつに取引量を見てみると、2億1000万バレルも一日平均でトレーディングされている。
全世界の生産量の2.5倍です。
なぜこうした現象が起きたのか。
それはひとえに投機筋と呼ばれる人々が介入している、つまりヘッジファンドが行われているからです。
(またかよぉw)
投機筋は0.6%に対して買い入れ予約を行っている、ということはそこで167倍の倍率になっているわけです。
全世界の石油を買うといえば莫大なリスクを抱えることになりますが、最悪の場合でも世界中の需要の0.6%を買い入れれば済む、ということで、投資筋は悪びれずにどんどん介入してくる状況が生まれています。
こうした人々は、以前為替で遊んでいたが最近いい商品がない...と感じていました。
その矢先にこの市場をみつけて介入し、とんでもない値段をつけはじめた。
もちろん「実際に油を買いたい」というわけではなく、価格が高騰すると先物の予約権を売ってしまうことになります。
つまり、輸出機構に対して増産しなさい、というのはナンセンスなのです。
産出国は何の罪も、勢力も、価格決定力もありません。OPECも、世界全体の石油生産の約40%を掌握しているだけにすぎない。
ですから、もし要請を出すならば、「あなたがたもNY証券取引所に上場してください」というのが、意味のある要請です。
わずか0.6%のWTIが価格決定権を持つ(!?)のではなく、世界全体の油を一箇所に集めて、そこに対して値段をつけるような構造を産み出さなければなりません。
しかし、それはなかなか実現しないでしょう。
価格が上昇すれば、OPECや石油会社も高値でさばけるからです。
増産します、お客さんは大切です、と言ってますが、その実ホクホク。しらじらしいとしかいいようがありませんね。
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