「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
  平成16年(2004)10月13日(水曜日)

「西気東輸」プロジェクトに大きな疑問符
4200キロのパイプライン工事は完成したが、買い手が不在
 
新彊ウィグル自治区の採掘現場から上海まで4200キロのパイプラインで天然ガスを運ぶ「西気東輸」の大プロジェクトは工事がついに完成、実験的な送輸にも成功した。

このプロジェクトの総投資額は1400億元(1兆8千200億円!)、パイプライン部分の工事だけでも540億元(7020億円)が注入された。

ところが西側メジャー三社がこれから撤退して世界を驚かせた。「商業コスト」に合わない、というのが撤退の理由だった。

それもその筈である。

長距離運送コストが伴うのははじめから予想されていたわけで、輸送費平均が1立方メートルあたり0・88元もかかる(ちなみに現場コルラでの引き渡し価格は僅か0・48元(1立方メートル)、長慶天然ガス田では1立方メートル当たり0・66元だ)。

平均輸送費が0・88元というのは東シナ海のガスそのものの値段(!)に等しい。

しかし共産党中央が決定した国家プロジェクトであるがゆえに、国有企業などには強制的に割り当てる

いまのところ正式に中国石油(プロジェクトの主体)とガス供給契約を締結した中国の企業は二十七社に過ぎない。予定よりはるかに少ないのはいかに国家プロジェクトとはいえ、コストが高すぎるからだ。
 
中国石油の見積もりでは契約した二十七社へのガス供給量は毎年80億立方メートルで、プロジェクト全体の年間供給量は120億立方メートルある。

契約を渋っているのは上海天然気管網公司、揚子―巴斯夫公司、浙江天然気開発公司など。

なにしろ上海での販売価格は1立方メートルあたり1・32元、都市ガスが1・46元にもなるからだ。

それというのも4200キロのパイプライン工事代金が距離別に課金されるため、西気東輸の販売形態は省毎に異なり、新彊ウィグルから一番遠い上海は輸送コストがそのまま上乗せされる。上海のユーザーが悲鳴をあげるのは当然であろう。

現在、上海における、ほかの供給源からの価格は、発電用が1立方メートル当たり1・15元、工業用が1立方メートル当たり1・28元、都市ガスは1立方メートル当たり1・46元となっている。
 
また東シナ海(尖閣諸島のものではない)で開発された天然ガスは供給地点で1立方メートル当たり0・88元。だから西気東輸のガスを買うはずがない。

ましてやオーストラリアから長期契約で中国が輸入しているLNG(石油液化ガス)も遙かに安い。
 
しかし当初から西側のメジャーが懸念した通り、これは軍事戦略目的のエネルギー確保であって、商業的採算を度外視したものだったのだ。

上海など大消費都市は目の前の東シナ海で開発中のガスや諸外国からの輸入ガスより高いものを義務感からでも購入する義務はない、と言うわけだ。

上海は都市ガスが普及した都市だ。

これからもガスが必要だが、LNG基地の建設が進んでいるうえ、周辺の広東、福建、浙江、山東でもLNG基地建設プロジェクトが進捗、西気東輸プロジェクトに背を向けている。
また火力発電へのガス供給も、価格面でまったく折り合っていない。

嗚呼、鳴り物入りの世紀のプロジェクトは完成したのに!



対台湾の「海峡戦争」予定してれば、当然「燃料自給」を考慮せにゃならん。まして、経済過熱気味でなおかつ効率悪いまま暴走させてるのだから、そりゃあ足りないでしょww

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