(産経新聞 2004/10/13)
李登輝前総統「中華民国は消滅」
国号改変求める
陳総統との「温度差」鮮明に
【台北=河崎真澄】台湾が正式国号として掲げる「中華民国」をめぐる論議に揺れている。
陳水扁総統が十日の双十節(実質的な建国記念日)演説で「台湾こそが中華民国だ」と現状容認の姿勢をみせたのに対し、前総統の李登輝氏は十一日、
「私が総統を務めた十二年間を含め台湾が『中華民国』領土だったことはない」
として、戦後台湾に君臨してきた「中華民国」体制を根幹から否定。陳水扁政権が進める新憲法制定に関しても、国号を「台湾」に改変して制定するよう迫った。
新憲法の制定問題で、陳総統は「主権独立は憲法論議に含まない」として、国号や領土範囲に関しては現状を変更しない方針をこれまで確認。双十節演説では、定義を棚上げして「一つの中国」を認めた「九二年香港協議」を踏まえて対話の再開を中国側に呼びかけたばかりであり、同じ与党陣営でも国際政治の「現実」に即した陳総統と、より明確な独立路線を進む李氏の“温度差”が浮き彫りになった。
李氏は自ら会長を務めるシンクタンク「群策会」が十一日、台北で開催した「日台の憲法制定とアジアの安定」シンポジウムで演説。
日本統治終了(一九四五年)後の台湾の地位について、蒋介石政権による接収が「戦後の軍事占領に過ぎず、国際法上の領土移転ではない。『中華民国』が台湾の領土主権を獲得したものとはいえない」として、四五年にさかのぼって「中華民国」による台湾支配の合法性を完全に否定した。
さらに李氏は、四九年に中国共産党との内戦に敗れたことで、「中華民国」が「実質的に消滅」したほか、七一年に国連代表権を中国に奪われた時点で「(中華民国は)法理上も消滅した」と主張。八八年の李氏の総統就任時点で「すでに中華民国は存在していなかった」と切り捨てた。
(台湾武士道、切れ味凄過ぎw。斬馬剣)
その上で、形式上は現在の中華人民共和国やモンゴルまでも領土範囲とする台湾の現行憲法体制が抱える「一つの中国」の枠組みにも言及し、この虚構が「台湾問題が中国の内政問題だと国際社会に誤解させ、中国には台湾侵攻の口実を与えている」と強調した。
国際社会が懸念する台湾海峡での武力衝突に対しては、「台湾内部がどうであろうと中国の領土野心は変わらない」と指摘。さらに、実質的に「一つの中国」の虚構を退けつつも「台湾こそが中華民国」という陳総統についても、「自分で自分をだますもの」と暗に批判した。
陳総統の双十節演説に関しては、野党側でも親民党の宋楚瑜主席が「右手で中国に対話再開を求め、左手で『中華民国』の国旗を捨てる陳総統の姿勢が両岸(中台)関係のネック」として、陳総統の“本音”を「反中華民国」と批判。「中華民国」の旗印で対中対話を進めるべきだと主張している。
国際法や憲法学に詳しい許慶雄・淡江大学教授は、「国際学説上、『中華民国』は中国の旧政府とされるが、外来政権や外国の統治を受ける選択も含め、(前提を定めずに)台湾の将来は住民自らが議論して判断すべきだ」と話しており、議論は今後さらに高まりそうだ。
◇
≪陳総統の対話再開メッセージ≫
■中国、米の反応を批判
【北京=野口東秀】台湾の陳水扁総統が中台対話の再開を呼びかけたことについて、中国外務省の章啓月報道官は12日、「(中国政府で台湾問題を扱う)国務院台湾事務弁公室が正式にコメントするだろう」と発言を控える一方、対話を好感した米政府の反応について「米側は『一つの中国』の原則を順守し、台湾に誤ったメッセージを送らないよう望む」と批判した。
章報道官は「米政府は中米関係を規定する『三つのコミュニケ』を守り、台湾とはいかなる形式であれ政府間往来と武器売却を停止するよう望む」と述べた。米側の対応に関しては、台湾の前総統、李登輝氏がワシントンの米上院内でのシンポジウムで回線を通じて8日、演説したことでも、同省の孔泉報道官が李氏を「台湾独立派」と切り捨てる一方で、会場提供に応じた米側をむしろ強く非難していた。
陳総統の発言については、中国系香港紙、文匯報などが「独立への意識が満ちており(台湾海峡の)緊張緩和に役立たない」などとはねつけていた。章報道官によると、中国側では13日に正式コメントを発表する。
◇
■日米は前向きに評価
台湾の陳水扁総統が10日の演説で中台対話を呼びかけたことについて、日米両国は「建設的なメッセージを歓迎する」(米国務省)「具体的な実現が期待される」(外務報道官)などと、前向きに評価している。
日米両国とも休日だったが、対話再開を呼びかけた同演説が重要であると判断して、外交当局によるコメントを出し、足並みをそろえたものとみられる。
日本政府は10日付の外務報道官談話で、「新たな考えが示されていることに注目しており、その具体的な実現が期待される」とした。
また、日米両国は12日、東京都内で竹内行夫外務事務次官とアーミテージ国務副長官による戦略対話を行い、中台関係について、平和的に問題を解決するため、中台間の対話が重要との認識で一致した。
ただ、今回の戦略対話で中台問題を主要議題とすることについて、「日本側には中国を刺激するとの慎重論もあったが、米側の強い意向もあり議論することになった」(政府関係者)という。
(...とぃぅことにしてぉこぉぅw)
(有元隆志)
◇
≪中台関係の主な動き≫
1992年10月 中台の「民間」交流窓口機関が香港で会談
93年4月 中台「民間」トップがシンガポールで初会談
95年1月江沢民国家主席、8項目の対台湾政策(江八点)発表
4月 李登輝総統、6項目の対中政策(李六条)発表
6月 李総統が非公式に訪米。コーネル大で講演
7月中国軍が台湾周辺で軍事演習を11月まで断続的に実施
96年3月台湾総統選に向け中国軍が台湾周辺で大規模軍事演習を展開。総統選では李登輝氏が初の民選総統に当選
98年10月 上海で中台「民間」トップによる第2回会談
99年7月李総統が「二国論(「特殊な国と国の関係」)」を提唱
2000年3月 台湾総統選で陳水扁氏が当選
02年8月陳総統中台は「一辺一国(それぞれ別の国)」と発言
03年 9月 陳総統、06年に新憲法制定の意向を表明
04年3月 台湾総統選で陳氏再選
7月 中台が海峡をはさんで軍事演習を実施
10月 陳総統、92年の香港協議を基礎に中台対話再開を表明
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