(1)

改めて永住外国人地方参政権の問題点を問う

帝京平成大学教授 米田建三(6/6末尾の略歴参照)

かつて国会内の議論を二分し、自民党内で反対・慎重論が大勢を占めたため継続審議となっていた「永住外国人地方参政権付与法案」は、先の衆議院解散により廃案となった。

推進論者の論理は、国家観もなく、安全保障への配慮もなく、薄っぺらなヒューマニズムと自虐史観、地方選の票目当てといった思惑がないまぜになった粗雑なものであった。それだけに、喜ばしい帰結ではあったが、油断できない。法案再提出の動きが出てきたからだ。

推進の立場にあった公明党の某幹部が、番記者にこう語ったという。

総選挙の結果、顔ぶれも変わったし、自民党内も今度はまとまる(賛成に)のではないか

また、自民党のこの法案に反対する議連の幹部も、こう危惧している。

なにしろ選挙で公明党の支援を受けて当選オた議員がたくさんいるから、再び議論になったら節を曲げる者が出てきかねない

国家の根幹に関わる重要な政策が、選挙協力の取引材料になる(現に「なっていた」)としたら、ゆゆしき事態である。衆議院議員在職中、この法案の成立阻止に力を注いだ立場から、あらためて国家解体につながりかねない危険性を指摘したい。

法案は衆議院倫選特(政治倫理の確立及び公職選挙法に関する特別委員会)に付託されていた。平成十二年七月五日、第一四八回国会に、公明・保守両党と民主党から提出されたが、両案は同文である。なお、法案の正式名称は、「永住外国人に対する地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権の付与に関する法律案」という。この法案の骨子は次のとおりだ。

「永住外国人が日本国民と同様の社会生活を営んでいる現状にかんがみその意見を地方における政治に反映させるため、永住外国人に地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権等を付与しようとするもの」との前提にもとづき−−

一、この法律において永住外国人とは、(1)出入国管理法及び難民認定法により法務大臣が永住を許可した者(2)サンフランシスコ講和条約の発効により日本国籍を離脱した者及びその子孫(特別永住者=在日韓国・朝鮮人、台湾人)をいう。

一、申請により、満二十歳以上の永住外国人に地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を与える。

一、選挙権を有する永住外国人に、

(1)地方公共団体の条例の制定又は改廃を請求する権利、
(2)事務の監査を請求する権利、
(3)議会の解散を請求する権利、
(4)議会の議員、長、副知事、助役等の解職を請求する権利

を与える


一、選挙権を有する永住外国人に、

(1)市町村合併協議会設置の請求権、住居表示に関し町又は字の区域の新設等についての市町村長案に対する変更請求権、
(2)公職の候補者の推薦届出をする権利、並びに
(3)投票立会人、開票立会人、選挙立会人、人権擁護委員、民生委員、民生委員推薦会委員及び児童委員への就任資格

を与える


−−というものだ。

被選挙権を除けば、まさに日本国民と同じ権利を与える内容であり、

この法律が成立すれば、外国人居住者の多い大都市部の政治は一変することになるだろう。また、

時をおかずして、被選挙権要求運動を引き起こすことは必至である。さらには、国政参政権要求運動にも発展しかねない。



(2)

責任を持ちえない外国人

そもそも参政権とは何か。国家という共同体の政治的運命を決定する権能であるというべきだろう。したがって、日本に居住、滞在していようとも、日本国に帰属せず、国の運命に最終的に責任を持ちえない外国人に参政権が与えられないのは当然である。

わが国には帰化の制度がある。帰化により日本国籍を取得すれば、地方政治どころか国政の選挙権、被選挙権も得ることができるのである。毎年一万五千人程度が帰化しているが、過去三年分の法務省統計をみよう(別表参照)。

帰化許可 申請者数   帰化許可者数

平成12年  14,936人   15,812人
平成13年  13,442人   15,291人
平成14年  13,344人   14,339人

申請者数より許可者数が多いのは、審査が翌年に繰り越される例があるからである。つまり、申請すればほとんどが帰化を許可されているのだ。

にもかかわらず母国の国籍を固守するということは、最終的には居住地の日本国と運命を共にせず、母国に帰属する意思表示と解すべきだろう。

日本国民にはなりたくないが、政治に首を突っ込む権利は寄こせ」というわけだ。

何をかいわんやである。

法案推進派の口癖のひとつが、「国政ではなく、地方の政治だからいいのではないか」というものだ。れっきとした国会議員のなかにも、そういった論理を振りかざすものがいるから、見識のなさにあきれる。

(公人なんだから、はっきり名指しすればいいじゃんw)

はたして、国家と地方は完全に分離された存在なのだろうか。地方政治の枠組みは、国政の場で議論されたうえ、国の法律で規定されたものである。

予算、教育、警察行政など、すべての政策が国と深く連動していることは、子供にもわかる周知の事実ではないか。平成七年三月十日の衆議院地方行政委員会で、私の質問に対し、(国賊代表w)野中広務自治大臣(当時)はこう答えた。

「国も地方公共団体も、ともに国家の統治機構の一環をなすものである」

地方政治と国政を分離して語るのは、無理な話なのである。地方政治のみへの参加であっても、結果的に国政に関与することになるのだ。

国会議員は自らの選挙基盤強化のため、系列地方議員の当選に血道をあげる。外国人に地方参政権を与えれば、国会議員自身が系列地方議員への支持を得るため、在日外国人あるいはその団体の政治的意向に配慮し、影響を受けるのは自明の理ではないか。


(続く)

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