南と北

2004年11月1日
(NNA)2004年11月01日 中国

変貌つづける南沙、日系進出で発展加速

広州市が一大製造基地として開発を進めている南沙経済技術開発区

開発区認定から既に10年以上が経過したが、最近トヨタ自動車が進出を決めたことで、開発のスピードがにわかに加速している。日系企業をとりまく投資環境、生活環境はどのように変化しているのか。またトヨタを含めた日系プロジェクトの進捗状況は。変貌を続ける南沙の最新状況をリポートする。【広州・榊原健】

南沙にはこれまでにも、造船や鉄鋼といった重工業の大手が進出を決定済み。先ごろトヨタの誘致に成功したことで、すそ野の広い自動車産業がもたらす、企業数の急増が期待されている。

南沙当局の指定コンサルタント会社・広州大蒲投資顧問によると、トヨタ関連では既に14社が南沙進出を決定している。

自動車産業は、完成車メーカーを円の中心に、そこに直接部品を供給する一次協力企業、部品メーカーに「部品の部品」を納める二次協力企業、さらに三次協力企業とすそ野を広げていく。現時点で南沙進出を決めているデンソーやアイシン精機といった14社はいずれも一次協力企業だ。

■トヨタはA区に集約

トヨタの完成車合弁企業・広州豊田汽車とエンジンを生産する広汽豊田発動機、一次協力企業14社はいずれも南沙「A区」(約780ヘクタール)に進出する。

そのA区は現在、整地がほぼ終了し、幹線道路の建設も進んでいる。広州豊田汽車の敷地190万平方メートルはまだ更地。広汽豊田発動機は既に工場建屋が完成している。部品メーカーの工場建設も一部でスタートしており、A区では今後しばらくの間、土ぼこりが舞い上がる建設ラッシュが続くことになる。

そのA区だが、トヨタ直系2社と一次協力企業で既に満杯となっている。そこで南沙当局は、A区から車で15〜20分ほどの場所にB区(約130ヘクタール)とC区(約90ヘクタール)を用意。今後進出してくる二次協力企業はB、C区に入居させる方針を示している。

在庫を持たないトヨタの生産システムの都合上、一次協力企業は広州豊田汽車に隣接する必要がある。一方で二次協力企業、三次協力企業は周辺地域であれば充分で、仏山や中山といった珠江デルタ地域の他都市も部品メーカー誘致に熱心だ。

周辺地域との企業誘致合戦に勝ち抜くため、南沙はB区の管理を、東莞で日系企業向け工業団地を経営する平謙国際に委託している。

平謙国際はB区内にサービスセンターを設置。進出企業に会社登記から工場建設、通関サポート、従業員宿舎経営などの各種サービスを提供する。南沙は、コストはかかるがサービスの専門企業を活用することで、周辺地域に差をつける考えだ。

■オフィス、ホテルも整備

企業数の増加により、オフィス物件、駐在員や出張者の宿泊施設といった様々な周辺施設が必要となってくる。

南沙に事務所機能を置く必要がある企業は現在、中央部東端、虎門大橋の付け根あたりにある2階建て施設に入居している。

この施設は、もともとショッピングセンターとして建設されたもの。しかし現時点では商業での需要が少なく、また周辺に適当なオフィス物件がないことから、一時的にオフィス施設として使用されている。広州大蒲投資顧問や平謙国際のほか、豊田通商なども同施設に事務所を開設している。

ただこれも過渡的な措置で、ショッピングセンターの裏手では2棟のオフィスビルが建設中だ。うち1棟は来年にも供用を開始する見通しとなっている。

南沙で日本人に利用されている住居、宿泊施設は、アパートメントの南沙浜海花園、南沙海港大酒店(4つ星)、クリフォードホテル(3つ星)などがある。一方で番禺や広州市区から通勤する人も少なくない。

その南沙に9月末、新ホテル・南沙大酒店がソフトオープンした。同ホテルは香港の財界人・霍英東(ヘンリー・フォック)氏の経営。まだ星の認定は済んでいないが、5つ星の認可が確実視される高級ホテルだ。

同ホテルには広州白天鵝ホテル内の日本料理店「ひらた」も新店舗をオープンする。レストランやカラオケ施設を含めたグランドオープンは来年2月を予定している。

南沙区内の日本料理店は5店ほどに達しており、日本語カラオケ店も増えている。日系企業の増加にあわせ、出張者や駐在者の生活環境は日に日に改善されているようだ。

■インフラ建設も加速

変化しているのは生活環境だけではない。南沙では各種の大型インフラ建設が進行中。9月末には西南部の南沙貨運コンテナ港が完成した。またクリークが多い区内の移動をスムーズにするため、蕉門水道では2本の橋が建設される計画だ。

■南沙概要

南沙は広州市の東南約50キロに位置する三角州。行政区画としては広州市に所属する。半径60キロ以内に東莞や深セン、珠海といった珠江デルタ地域主要都市が収まっており、また香港へも38カイリ。まさに珠江デルタ地域のへそのような位置にある。

1993年5月に国務院から南沙経済技術開発区として認定を受けた。現時点では総面積797平方キロのうち、536平方キロのエリアで「二免三減」といった国家級経済開発区の優遇政策を享受できる。<広東>

<メモ>

トヨタ直系2社概要

◆広州豊田汽車

2004年9月に合弁認可取得。資本金は13億元、広州汽車集団との折半出資。06年中ごろから中型セダン・カムリ(2〜2.4リッター)を生産。当初は年産10万台からスタート。

◆広汽豊田発動機

04年2月設立。登録資本金11億元。トヨタが70%、広州汽車が30%を出資。05年初よりカムシャフト、クランクシャフトなどエンジン部品生産。同年秋からはAZエンジンを生産。初年度は2万5,000基を生産する。



「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成16年(2004)11月2日

 中国軍需工場で最近、海軍兵器を大増産の模様
  新艦艇、ヘリコプターなど近代化兵器

ストレートタイムズ(10月30日付け)によれば、中国軍需工場は海軍からの大量発注により、労働時間を延長しても納期に間に合わせるための増産を繰り返しているという。

主力工場では、すでに引退したエンジニア、技術者が掻き集められ、国家国防に邁進せよという号令のもとで、日夜、残業を余儀なくされている。

「原子力潜水艦用の発電エンジンをつくっているハルビン発電装置公司では、従前になかった大量注文をこなしている」(香港『明報』)

ハルビン航空機器製造公司では、武装攻撃用ヘリコプターの量産に励み、WZ―9型の新型はまもなく実戦配備される。

このほかにも上海、大連、広州の造船所はフル稼働をつつけている。

これらは何の前触れか?


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