(産経新聞)
■【主張】ブッシュ氏再選
歴史の流れに沿う勝利 国内外の結束へ配慮を示せ
米中枢同時テロ「9・11」後の最初の大統領選挙は、四年前と同様に大接戦のすえ、共和党のブッシュ大統領の再選が決まった。今回の大統領選ほど米国内外を巻き込み、「ブッシュ」か「反ブッシュ」かの二極分化で争われたことはなかった。しかし、米国民はブッシュ氏を選ぶことで、「テロとの戦い」を断固として戦い抜く覚悟を内外に示した。
大統領選挙は、票の数え直しをした二〇〇〇年の激戦区フロリダ州の二の舞いが懸念されていた。今回、最後までもつれたのは、中西部のオハイオ州だった。しかし、投票資格に疑問のある暫定投票などを含めても、民主党のケリー候補の勝算はなくなった。
◆敗北宣言で良き敗者に
ケリー陣営は各州に配置した多数の弁護士を使って、法廷闘争に持ち込む構えだった。しかしいつまでも法廷闘争を続けることは、世界の指導者としての米国の信頼性を損なうことになりかねない。まして、イラクの実情を考えれば、弱い戦時の大統領が政権を運営することは、世界にとっても不幸である。
米国には「グッド・ルーザー」(良き敗者)の伝統がある。潔い敗者は勝者に勝るとも劣らない尊敬を受けるのだ。一九六〇年の大統領選挙でケネディ候補に敗れたニクソン候補は、不正選挙の疑いがあったにもかかわらず潔く敗北を認めた。ケリー候補は、この先例に従って敗北を宣言した。民主党の有力議員らが、ケリー候補に敗北宣言をするよう勧めたのは妥当な判断だった。
ブッシュ大統領は今後、ケリー陣営との和解を進め、分裂した国内を統一していかねばならない。今回の選挙では、有権者の九割以上が早くから支持する候補を決めており、近年になく浮動票が少なかった。それだけ米国社会は、一定の価値観に根ざしたブッシュ大統領と、その路線を拒否する二極対立としてとらえられる。
民主党の支持者には、ブッシュ政権が軍事力の行使や教育問題などで、過剰な新保守主義に傾斜しすぎているとの不満と不安があった。しかし、米国にはテロリストの攻撃を座して待つような考えはない。強い米国を求める人々はブッシュ政権による先制行動を支持した。
そのブッシュ政権には、イラクで「フセイン打倒」に成功しても、戦後処理に手間取っているとの負い目がある。イラク戦争後に人的、資金的な復興のコストがかかることを思い知らされたのだ。したがって、ブッシュ大統領の二期目の政権運営は慎重にならざるを得ないだろう。
◆休みなきテロとの戦い
ブッシュ政権の外交課題はイラクの復興と拡大中東地域の民主化である。残虐なテロリスト、ザルカウィ容疑者は「イラクの民主主義はテロ活動を窒息死させる」と仲間に警告していた。民主主義はテロリストが恐れるシステムなのである。アフガニスタンで初の大統領選挙によってカルザイ大統領が勝利したことも、完全ではなくとも民主主義の大きな一歩である。
ケリー候補のイラク政策は、基本的にブッシュ政権とそう違わない。国際協調のケリー政権が誕生したからといって、仏独はイラク復興のために実際に兵を派遣するとは思えない。むしろ「ブッシュの責任だ」と、いい逃れしてきたころを懐かしむに違いない。
★仮にケリー新政権が誕生なら対日政策は、より厳しいものになっているだろう。
民主党綱領では、アジアに関する記述は対中関係を中心に英文でわずか八行しかなく、日本についてはわずか一行である。
共和党がアジアに関して、百四十八行を費やして「日本がもっとも重要」と言葉を尽くして述べているのとは格段の差である。
米国は引き続き「テロとの戦い」など過酷な世界と向き合わなければならない。イラクの戦後処理だけでなく、北朝鮮やイランなど核開発に血道を上げる無法(ROGUE=ゴロツキ)国家がある。
大統領選のしこりが残ると、これらを解決する米国の指導力がそがれる。米国民は戦争やテロの脅威の前に、戦時の大統領の下に結集する国民である。歴史の流れに沿った選択だけに、米国の威信と国際社会の安定のためにも速やかな和解を求めたい。
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