(宮崎正弘氏メルマガから)
【...今後10年、20年は米国の政治の主導権は共和党が握るのかもしれませんが、長期的に見ると、米国社会はヒスパニック系住民の増大により、より複雑な多人種国家に変貌すると思われます。その結果、民主党に有利な政治環境となり、民主党が恒久与党、共和党が万年野党と化すことも考えられると思いますが...】
(宮崎正弘のコメント)まず人口動態ですが、選挙毎に人口の流動比率によって、州別の「大統領選挙人」が変動します。そのうえ下院議員は二年ごと改選ですが、毎回、人口比によって「選挙区」が変動しています。
第二にヒスパニックばかりか、多民族国家アメリカで、その民族の構成比が迅速に変化しており、最大の注目点はイスラム教徒の増大です。黒人、ヒスパニック、アジア系につぐ勢い。おそらくムスリムは500万から600万人の間でしょう。
嘗てアメリカは「WASP」が支配しました。現在最大の人口はドイツ系、ついでアイルランド系、三番目がWASPです。ついで黒人、その次はヒスパニック。
しかしヒスパニックは
(1)カリフォルニア州とニューメキシコ州の「チカノ」(おもにメキシコから流入)と
(2)カリブ海(とくにキューバ、ドミニカ、ジャマイカあたり)から移住してくる東海岸のヒスパニック
に大別できます。
かれらはうちの後者は、今回とくにブッシュ支持が多かった(典型はフロリダ州)。ブッシュは奥さんがヒスパニック系であるうえ、大統領自身がスペイン語をかなり流暢に喋ります。
第三に民主党はたしかに黒人、ユダヤ、ヒスパニックが強固にささえてきた沿革がありますが、それはケビン・フィリップスが『富と貧困の政治学』などで説いたように、所得格差と税金論争が原因だった。
貧困層の味方である(と広く信じられてきた)民主党の候補者が東海岸出身の鼻持ちならぬエリートで、奥さんが大金持ちだとくれば、党派を超えた反発が強い。嘗ての図式は成立しにくくなっています。
ケリーがあれだけの猛追が可能だったのは、東部海岸のエリートのいう国際主義からうまれたイラク政策への疑問からです。
民族の識別が共和、民主と単純に割り切れなくなり、ましてや民主党最大の票田だったユダヤ系は、今回、イラク戦争への態度でブッシュへ25%の票が流れた。
★ジョージ・ソロスは「反ブッシュ」の先頭にたって巨額を献金しましたが、あれは財務長官狙いという露骨な打算のため、じつは多くからそっぽを向かれていた。
第四にアジア系ですが、日系の優位は消え、中国系の進出は瞠目すべきでしょうね。すくなくとも★カリフォルニア州という(もし独立したらカリフォルニアだけで世界七位のGDP)民主党左派の金城湯池の地域では、ゲイ、差別反対、金持ち優遇の減税反対など60年代からの左翼運動のメッカとなり、アジア系も運動の主翼です。
ハリウッドはユダヤとイタリア、ここに映画競作などで中国がどっと入り込み、アメリカの世論形成に巨大な影響力を行使しようとしています。シュワちゃんを例外として、殆どの映画スターは民主党支持ですが、あれは東海岸のエリートへの知的劣等感からくる追随という要素もあるでしょうね。
というように民族構成比は従来の党派概念を崩し、共和、民主と識別不能、というよりも各論争によって、アドホックな、民族を越えた「連合」がうまれており、その波にのったほうが選挙に勝つというアメーバ的状態に変貌していると言ったほうが良いかも知れません。
ですから今後、共和党政権が長期化する展望は希薄で、2008年はおそらく民主党が分裂を克服して新しい党派に生まれ変わり、政権を恢復するでしょう。ヒラリーがこれから狙うのは、党の再統一。これに失敗すれば2008年ヒラリーの目がつぶれ、民主党が分裂選挙。そうなれば漁夫の利で共和党、もういちどの勝利もありえますが。。
ともかく長期的に一党の恒久政権というシナリオは、二大政党の歴史をほこるアメリカでは考えにくいと思います。
【...すでに昨年辺りから,ボストンの新聞やユダヤ系の雑誌が「ケリーは,今までカトリックだと思われてきたし,自分でもそう信じていたが,彼のルーツ探しの結果,実はユダヤ人だ」という記事が出ていたからです。もちろんアメリカで公然と「彼はユダヤ人だ(だから,反対だ)」とか,逆に「彼はユダヤ人だ(だから支持する)」というのは,公的な場面では語れないはず
だということは知っています。人種差別になると判定されてしまうでしょうから。...数年前まで純粋のカトリックと見なされていて,いかにも東部のエスタブリッシュ然としていて,あまりユダヤっぽくないユダヤ人であるケリーが今回の選挙で大統領になることはユダヤ人がアメリカ大統領(世界最大の権力者)になる千載一遇の機会でしょう。
...もちろん,中西部・南部はたんに保守的な地域だと言えばその通りですが,しかし,今回の選挙結果を見ると,まさに伝統的なキリスト教徒が多数を占める州,とくに,メキシコ系,キューバ系などラテンアメリカ系のキリスト教徒が多数を占める中西部・南部は圧倒的にブッシュ支持でした。
ユダヤ系のマスコミ・資産家たちがしゃかりきになって押しているケリーがユダヤ人であるからこそ,中西部・南部のアメリカのキリスト教徒は断固としてブッシュを支持するであろうし,まだユダヤ人が大統領になることを決して容認しないであろうと,思っていました。...】
(宮崎正弘のコメント)ご指摘の件は、きわめて微妙です。つまりWASPのアメリカ人に聞いても口を濁しますから。
ただしユダヤ系に対する見えない差別は、一昔前ほどではなく、全般的にみても人種間の差別意識は希薄となっている現実はあります。東部および西海岸の若い世代はとくにそうです。
ユダヤ系でいえば、クリントン政権は国務、国防、財務という中枢閣僚の三人がユダヤ系でしたが、大騒ぎにならなかった。
四年前のゴア候補のときも副大統領候補だったリーバーマンは歴としてユダヤ教徒、今度再選されたNY選出の上院議員シューマーもそうです。
世代間の認識の差、地域差があってなんとも結論を出すのは危険ですが、ご指摘の要素は、もちろん十分に加味されるべきでしょうね。
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