(産経新聞 2004/11/11)

中国海軍「漢級」原潜の可能性 潜水艦の追尾継続

(略)

防衛庁は、探知した潜水艦のスクリュー音から、近年周辺海域で活動を活発化させている中国海軍の「漢(ハン)級」原子力潜水艦の可能性が高いとみて確認を急いだ。ただ「浮上しない限り国籍特定は困難」(海自幹部)という。

(略)



■【主張】海上警備行動 国の意思を一応は示した

国籍不明の潜水艦が、沖縄県の先島諸島周辺の日本領海に不法侵入し、海上警備行動が海上自衛隊に発令された。自衛隊の出動も躊躇しないという国家の意思を相手国に一応示したといえる。

しかし、領海侵犯され、領海外に出てからの発令だったのに加え、★海自の哨戒機は潜水艦に対して浮上・退去を要求しなかった

政府はどこの国に所属するかを解明し、断固たる措置を取る必要がある。

潜水艦は追尾を承知で領海侵犯したふしがあり、日本の防衛能力を試していると受け止めていいからだ。日本の平和と安全が、公然と脅かされる事態を繰り返してはならない。

★国連海洋法条約では潜水艦が領海内を通過する場合には浮上し、国旗を掲げなければならないことが定められている。領海内では、第三国による一切の軍事行動も禁止されており、今回の潜水艦の違法行動は明白だ

問題は、領海侵犯した船舶に対して当然行使できる国際法上の武器使用の権利が、国内法によって制限されていることだ。

★現行の法制度では武器使用は認められているものの、正当防衛、緊急避難を除き、相手を殺傷するような使い方は禁じられている

海上警備行動が発令されても、海自は海上の治安維持のために必要な警察官職務執行法を準用しての武器使用しか行えない。

これでは領海侵犯への抑止力にならない。相手側は、警告射撃にとどまることを知っているからこそ、今回のような行動をとったといえるのではないか。こうしたことを防ぐためには、現在、欠落している領域警備規定を整備する必要がある。

★諸外国では常識になっている緊急時の武器の使用基準(ROE)も、対領空侵犯措置を除いてわが国にないが、これも併せて見直すべきだ。

沖縄本島から約五百キロにわたる先島諸島は、宮古島の空自のレーダーサイト以外に自衛隊は配置されていない。防衛の空白地域であることも相手側に見透かされているのではないか。

中国などが海軍力を強化している現状を考えれば、★昨年末に閣議決定された海自の護衛艦、哨戒機などの縮小計画は机上のプランにしか過ぎないことがわかろう。



(太田述正 NOBUMASA OHTA NEWS LETTER 2004.11.11)

(略)

2 技術的解説

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この潜水艦は午前4時に初めて発見されたわけではありません。

日本政府は、米国政府によって、米海軍の世界の海を覆う潜水艦探知ソナー網の日本周辺海域部分を日本の経費で整備・運用することとされており、日本が得た情報は自動的に米海軍に吸い上げられる一方で米海軍が得た情報は自動的には日本はもらえません。

★このソナー網は、一定以上の深度の海中であれば、そこに潜む潜水艦のエンジン音やスクリュー音(音紋という)を検知することによってその潜水艦がどのあたりの海域にいるかを完全に探知できます。

日本によって得られた音紋情報は日本政府のコンピューター、ひいては米海軍のコンピューターに全て蓄えられており、音紋情報さえあれば、これと照合することによって、その潜水艦の艦名まで分かります。

その場合、当然国籍も原子力潜水艦か通常型潜水艦か等も分かります


(中国のものと見られる原子力潜水艦)はこうして探知され、ソナー網上で追尾されていたところ、10日の午前に出動を命ぜられたP-3Cによって機上から投下されたソノブイ(浮遊ソナー)を用いる(まず音を出さないソノブイを用いて範囲をしぼり、次ぎに音を出すソノブイを用いる)ことによって4時頃ピンポイントで位置がつきとめられた、ということなのです。

3 技術的におかしな報道

産経新聞以外の新聞には、訳の分からない報道がいくつか見られます。

例えば、東京新聞は、大野長官が「哨戒機から潜水艦に対し、浮上して旗を掲げるか、退去するよう要求した。できるだけ平和裏に解決したい」と述べたと報じ、読売新聞は「海上自衛隊は、潜水艦が領海内にいる際、ソナー(水中音波探知機)を投下し、浮上して国籍を示す旗を掲げるよう通告した。反応がなかったため、領海外に退去するよう求めた。警告射撃はしなかった。」と報じました。

★潜航したままの潜水艦に対し、航空機が無線通信をする手段はない(水上艦艇も同様)ので、音を出すソノブイを通信手段として(モールス信号的に?)用いたということなのかもしれませんが、護衛艦搭載ソナーならともかく、ソノブイをそんな形で使えるなどとは聞いたことがありません。

「警告射撃はしなかった」に至っては、潜水したままの潜水艦に対する銃砲撃など、やっても何の意味もありません。

質問した方も答えた方もピンボケです。

それに第一、P-3Cには対水上艦艇用のハープーンミサイルや対潜水艦用のアスロック(ロケット魚雷)は搭載できても、銃砲類は搭載できません
。護衛艦なら銃砲は当然備えていますが・・。

(略)



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