(毎日新聞 2004/11/21)

社説:自民改憲原案 読んで心がはずまない

自民党憲法調査会が憲法改正草案大綱の原案をまとめた。全面的改定で、9章から構成される。ただ新憲法の理念や立脚点を示す「前文」は「略」としか書かれていない。

そのせいもあって、なぜ憲法を改めなければならないのか、将来の日本をどういうふうにしたいのか、原案でははっきりしない。通読して思うのは、改憲への熱気が伝わってこないことだ。むしろ古色蒼然(そうぜん)の趣すら感じる。

新憲法の「基本的な考え方」については「歴史、伝統及び文化に根ざした固有の価値を踏まえたものでなければならない」「日本人のアイデンティティーを確認してこそ真の国際人になることができる」と説教調だ。底流には「現行憲法は押し付けられた」という意識があるようだ。押し付けられたという理由を改憲の根拠にするのは、施行後半世紀以上も国民が憲法を尊重した事実によって、もはや時代遅れの論法となっている。

原案は「日本国民は国家の独立と安全を守る責務を有する」と、国民に新たな義務を課している。政府の権力に枠をはめ、普遍的人権を認める近代的憲法観から後退し、国民に命令する復古調の感じがする。世の中のことがうまく機能しないのは権利が多すぎるせいだという論にも通じかねない。

条文上の改正ポイントは(1)海外での武力行使を可能にする「自衛軍」の創設(2)現行憲法では認められていない集団的自衛権の行使の明記(3)象徴天皇を「元首」と位置づけ、女性天皇を容認(4)新しい人権として、プライバシー権、名誉権、知る権利、犯罪被害者の権利などの追記−−などだ。

いずれも国論が四分五裂している問題だ。自民党内では「自衛軍」の設置や武力行使を含む国際貢献活動には異論もある。女性天皇の容認についてこれまでの議論は皇室典範を改定すべきだという意見が大勢だった。

保岡興治自民党憲法調査会長は「原案が方向性を決めるものではなく、意見交換しながら内容を詰めていきたい」と語っている。議論が煮詰まっていないにもかかわらず、あえて表に出した背景には、このところ減速気味の改憲論争をまた活性化させようという狙いがあるようだ。

公明党の神崎武法代表は「集団的自衛権を認めないというのが党内の大勢だ。民主党も行使には否定的と聞いている」と早くも自民案をけん制している。

「党利党略を超えて改憲を実現する共同作業が求められる」と改憲を急ぐ主張が見受けられる。しかし、憲法をどうするかはまさに党の存在をかけた問題であり、各党の「党利党略」の質が問われる。

自民党は12月に大綱を作成し、結党50周年の来年11月をめどに新憲法草案を策定する予定だ。原案は、日程が迫ってきて生煮えのまま無理やり宿題を間に合わせた感じがする。

憲法改正は最後には国民投票にゆだねられる。感動のわかない今回の自民案が国民の心をとらえたとは思えない。


毎日新聞 2004年11月21日 0時09分


毎日お花畑新聞、としよぉw

閑あったら逐次おバカにしょ。

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