(1)機動運用部隊の作戦態様
【日本海】方面においては、主として北朝鮮の中射程の弾道ミサイル防衛に任ずる。
将来的には(支那通化基地の)巡航ミサイル対処も必要となる可能性がある。
また、日本海での沿岸部以遠での海上交通の破壊などを目的とする北朝鮮や中国の比較的近代的な海上戦力への対応も必要となる。
一方、朝鮮半島有事の場合、周辺事態法に基づく米軍協力や多数の避難民保護といった任務が付与される。事態の進展によっては、韓国軍への何らかの協力活動が必要となるかもしれない。
【東シナ海】方面においては、中台紛争や半島有事に関連して、又は対日攻撃事象として、中国や北朝鮮の主として中射程の弾道・巡航ミサイル攻撃や中国の比較的近代的な海上戦力による沿岸部以遠での海上交通の破壊や海底資源探査・開発・操業などへの妨害活動、揚陸艦などを加えての島嶼侵攻などへの対応が必要となる。
中台紛争発生の場合、状況によっては、周辺事態法の適用など、朝鮮半島有事に準じた任務が付与される可能性もある。
【太平洋】方面では、中台紛争や半島有事に関連して、又は対日攻撃事象として、中国の最も近代的かつ高性能の海上戦力による沿岸部以遠での海上交通の破壊、島嶼占拠などへの対応が必要となる。
中台紛争発生の場合、グアム島周辺や南西航路帯など、軍事海上交通路の防護などの作戦もあり得よう。
この場合、状況によっては、前述の朝鮮半島有事に準じた任務が付与される可能性もある。
冷戦時はここまでが海上自衛隊の担当範囲であったが、今後は任務の拡大とともに、地理的にも広域化する。
【南シナ海】方面においては、中国と台湾、南沙諸島領有問題などで係争中のASEAN諸国との紛争が生起した場合、又は対日攻撃事象として、中国の短・中射程の弾道・巡航ミサイル攻撃、新旧交えた多数の海上戦力による海上交通の破壊への対応が必要となってくる。
【マラッカ海峡】などのチョーク・ポイント(航路収束点)においては、国際テロリストや地元海賊などによる海上テロによって海上交通の無差別破壊が行われる可能性が高い。
これらテロリストなどが、北朝鮮など懸念国家と暗部で繋がっている場合は、無差別破壊でなく、日本などの特定国家を対象に海上テロが行われる可能性もある。こういった脅威に対し、国際、地域協力への貢献の一環として、多国間の協同パトロールなどに任ずることが要求されることとなろう。
【インド洋】から中東に至る海域では、国際テロリストによる海上テロによって海上交通の無差別破壊が行われる可能性がある。
これらテロリストなどが、上記と同様に、日本などの特定国家を対象に海上テロを行う可能性もある。
また、現在もアラビア半島南部において続行中の多国籍海軍による対テロリスト海上阻止活動は、今後も継続するものと思われ、引き続き、こうした海上阻止活動に対する協力支援活動等を続行することが強く要求されることとなろう。
(2)地域警備部隊の作戦態様
【日本海】側沿岸部では、北朝鮮や状況によっては中国の比較的近代的な海上戦力による海上交通の破壊、海峡など航路収束点への機雷敷設などによる封鎖、漁業や海上諸活動の妨害、離島へのゲリラ・コマンドウの上陸、武装工作船による特殊活動などへの対応が必要となる。
一方、状況により、朝鮮半島有事の場合、周辺事態法に基づく米軍協力や多数の避難民保護といった任務が付与される。
【東シナ海】側沿岸部においては、中台紛争や半島有事に関連して、または対日攻撃事象として、中国の比較的近代的な海上戦力による海上交通の破壊、海峡など航路収束点(チョーク・ポイント)への機雷敷設などによる封鎖、漁業や海上諸活動の妨害、離島へのゲリラ・コマンドウの上陸、武装工作船による特殊活動などへの対応が必要となる。
中台紛争発生の場合、状況により、周辺事態法の適用など、朝鮮半島有事に準じた任務が付与される可能性もある。
【太平洋】側沿岸部では、中台紛争や半島有事に関連して、又は対日攻撃事象として、中国の最も近代的かつ高性能の海上戦力による海上交通の破壊、港湾や水道など航路収束点への機雷敷設などによる封鎖、漁業や海上諸活動の妨害、離島へのゲリラ・コマンドウ(少数特殊破壊戦闘員)の上陸、武装工作船による特殊活動などへの対応が必要となる。
中台紛争発生の場合、上記と同様に、周辺事態法の適用など、朝鮮半島有事に準じた任務が付与される可能性もある。
おわりに
このようにわが国の海上防衛を取り巻く脅威の態様を分析すると、わが国として、「非本格的侵攻」のみならず「本格的侵攻」に対しても、機動運用部隊、地域警備部隊の何れも即応を旨とする十分な備え(常備即応防衛力)が必要であることは自明であり、少なくとも「思い切った縮減」を図る必要があると言う結論にはならないはずである。
ここでは海上を例にとったが、陸上、航空防衛力についても、国際安全保障環境を綿密に分析し、(想定敵国の)脅威の実態や(戦後憲法に縛られている)自衛隊の(脆弱性とソレにもかかわらず保持している)特性に応じた、「本格的侵攻」や「非本格的侵攻」への対応に関する再検討が求められる。
■報道によると、政府部内では、目下、財務省と防衛庁の間で、いわゆる防衛力の「大綱規模」を巡って、熾烈な議論を闘わせているとのことであるが、財務省側の理屈は、「先ず始めに縮減ありき」の一本槍で、綿密な国際安全保障環境の分析に基づく説得力ある議論が披瀝されたという印象はない。
(かつての土井のように「ダメなものはダメっ!」とか「削るのは既定事項なのよっ!」とかw)
海上防衛力を例にあげれば、主力たる護衛艦について見ると、現大綱の54隻に対して、財務省案では38隻となっている。
30%カットというこの数字は、正に「独り相撲の大軍縮」を象徴するものと言わざるを得ない。
★日本の安全保障を危うくする事態が、わが政府自身の手によって進捗しているのだ。
(団塊&ポスト団塊世代の「自虐」の行き着いた結果、か)
一方、米軍の変革に伴う前方展開兵力の再編構想に関し、日米の協議が進められている。
★日本政府はこの議論の中で、米軍に対し再編後の揺るぎ無い抑止体制の維持を強く求めているようであるが、その裏で自らは事実上の大軍縮を進めるという姿勢は、全く無責任な背信行為と言わざるを得ない。
再選なったブッシュ陣営は、今後、日本側に安全保障面での合理的かつ応分の役割分担を求める姿勢を強めてくるとのことである。その前に、日本側として、自主的、主体的に適正な措置が取られることを望むばかりである。
今月、中国の漢級原潜が、国際法に違反して潜航状態のままわが国領海を侵犯したが、海上自衛隊は、対潜哨戒機や護衛艦を派出して、海上警備行動を見事に完遂した。
積年「本格的侵攻事態」に備え、所要機能を保持し、即応態勢を維持し、営々と努力を重ねてきた成果である。
財務省が、これで目を醒ましてくれると良いが。
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