AEI論文(2)

2004年11月25日

政策を成功に導くいくつかの条件を挙げてみよう。

(1)国務省内の組織・人事の再構築

北朝鮮は今日アメリカが直面する最重要問題の一つであることを国務省の連中が再認識せよ

(2)対北朝鮮政策評価の確立と公表

北朝鮮政策はその都度、それが成功だったのか失敗だったのか、明確の総括していくことが必要である。

北朝鮮非核化のための六カ国協議は対話路線を進めいてきた。その間北朝鮮は核兵器計画を進めていた。この歪んだ構造は絶対に受け入れられない。

次回交渉においては、国務省は六カ国協議の目的、最終結論はこうあるべきであり、それが達せられれば成功、そうでなければ失敗であると明確に定義する必要がある。

その内容は事前に先方にも伝えておく必要がある。

その結果交渉が失敗なら失敗で、国務省は恥と思わずその旨をきちんと公表すべきである。

(3)六カ国協議は取り仕切る中国に責任の自覚を求める

北京はこれまでたいへんうまく取り込んできた。あるときは問題解決に貢献する面もあったが、あるときは問題解決の障害にもなってきた。

アメリカ国務省はこのような中国の無原則かつ曖昧な対応を批判せず、それをよしとして満足してきたのである。

いまの対話による北朝鮮非核化交渉が失敗すれば、結果的に中国は大きな代償を払うことになるであろう。

またもし北朝鮮が完全核装備国になったとすれば、中国はさらにはるかに大きな危険を抱え込むことになるであろう。

このことを理解して初めて、中国に対する米国の協力がよりいい結果をもたらすことになりうるであろう。

中国が北朝鮮による核の脅威を軽減することが自国の利益であるとはっきりと認識すれば、中国は金正日体制を残しておいていいのかどうかという問題にも、強力かつブレないようになると期待できる。
 
(3)韓国政府の宥和政策に惑わされていないか?

アメリカの北朝鮮政策は重大な交代を余儀なくされた。それは2002年の韓国大統領選挙である。その結果韓国では新サヨクの学者および活動家が韓国の安全保障政策に多大な影響を与えた。

韓国国防大臣は「もはや北朝鮮は主要な敵国ではない」という驚愕すべき声明を発している。

韓国は既にアメリカの同盟国離脱の過程にある。

韓国を併呑して統一を図らんとする北朝鮮と国境を接し、リベラル和平理論の政策遂行をしながら、自己の安全は安保条約で前線防衛は米軍に任せている...。

なんという不自然な関係であろうか。

これこそ「朝鮮半島第二の危機」と呼んで言いすぎでない由々しき事態である。

アメリカとは安保条約を維持しながら、一方では北の脅威はないと宥和政策を進める韓国と付き合っていくのは並大抵なことではない。

しかしそれはどうにもならないという課題ではない。

北朝鮮問題に対する、韓国の世論の激しく二極化している。しかも数の上でも世論はまさに真っ二つに割れている。しかも現政権の評価はけっして高くない。

★韓国の南北融和派との融和を図るのではなく、彼らの頭越しに韓国国民に訴えて韓国の親米派との連帯を強化して行くほうがいい。

そのほうがおかしな連中をまともにするために有効である。

(4)北朝鮮の核脅威減には外交交渉以外の戦略も用意すべき

北朝鮮との外交交渉による核問題の解決は成功しなくてもけっしておかしいことではない。

その場合に備えて別の戦略を用意しなければならない。

まことに逆説説的な話ではあるが、★外交交渉によらぬ解決を模索すればするほど、外交交渉の成功の確率が高まるというのが対北朝鮮交渉の特徴である。

(5)北朝鮮に非共産主義政権を擁立する計画を準備しておくこと

あまりにも長い間米国だけでなく、他の諸国も金正日政権が消滅したら現実にどうなるか...そんなことはあるはずがないという前提で出行動してきた。

そうではなく、北朝鮮のポスト金正日への体制移行にアメリカは積極的に関与するのだという考えでアメリカの政策は策定されるべきである。

このことは同盟国、関係国と協調して成功の可能性を高めリスクを軽減を図らなければならない。

これはたいへん微妙かつ危険な要素を含む問題なのである。自由な民主的な非核の統一朝鮮への道は不確定要素だらけである。

しかしいくら難しいとはいえ、この道筋は朝鮮半島の人民のためでなく近隣諸国にとっても最善のものであることにまったく疑義はない。

(6)ブッシュは後世に政治的遺産を残せるのか?

第二期目に入るブッシュ大統領が対北朝鮮政策を考えるとき、彼の業績評価を高めるより落とす可能性が十分にある。

ケリーは選挙の争点の一つとしていい点を突いてきた。北朝鮮問題はブッシュの四年間はその前に比べ悪化しているという点である。ケリーの言うことは正しい。

ブッシュ政権の要人はみな、クリントン政権は国際テロの脅威を拡大したとして激しく非難する。それは正しい指摘ではあるが、いまの北朝鮮の脅威が四年前の北朝鮮の脅威より大きいとすれば、それはほかならぬブッシュ政権が残した政治遺産(負債)にほかならない。

歴史は悪い遺産に対して甘い評価をすることはないであろう。ブッシュよ、自覚するがよい。





AEI(アメリカン・エンタプライズ・インスティチュート)はなんと言っても「ヘリティジ財団」(保守最大のシンクタンク)とならんで、ブッシュ政権へ高官を多数送り込んでいるシンクタンクでもあり、その発言力も強大です。


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