(産経新聞 2004/12/06)
【正論】作家・深田祐介
中国は20年後の転機を生き残れるか
北京政府と親中派の愚かさ競演
≪正気と思えぬ身売り発言≫
文芸春秋十二月号の「大会議 中国爆発」は、企画としてはテレビのワイドショーじみて大勢集め過ぎ、すべて「言いっ放し」で終わっており、散漫に流れているという印象だ。
しかし、この企画で評価すべきは、藤野文晤氏という、異常なほどの熱狂的な中国信奉者の発言を初めて活字にした点にある。
筆者も以前、彼が大手商社の役員時代に取材し、その異常性に肝をつぶした体験がある。
「太平洋地区、アジア地区はすべて近い将来に中華圏になる」と発言するから、「その場合、日本はどうなるのか」と質問したところ、「中華圏の一国として生きてゆくのです」と言い放ったのである。
要するに、日本は中国の属国、あるいは属領として生きてゆけという正気の沙汰(さた)とは思えない発言だった。
今度の座談会でも、類似した発言を同氏は繰り返している。
「日本人が中国と本気で付き合おうと思ったら、むしろ中華世界の一員になる覚悟が必要です。たとえば日本人は会社人間だけど、中国人はみんな個人。その中国人を使っていこうと思ったら、こちらが中国人にならなきゃ」
(どこかで聞いた発言だなぁw)
「小泉総理は強引に靖国参拝して、寝た子を起すようなことをやっている。だから小泉首相が参拝をやめればいいんです。靖国で譲歩したら、中国は次に何を出してくるかわからない、というような、相手を信頼しない外交なら、もうやめた方がいいでしょう」
藤野氏は図に乗って、「日本は経済ばっかり先に行って、政治はあとからちょこちょこついてくるだけ。それどころか、足を引っ張っているのが現状ではないですか」と言い出すが、辛うじて中西輝政氏だけが、「いやいや、経済人こそもっとポリティカルなセンスを持つべき」と暴走を制止にかかる。
中西氏はさらに、クリントン時代に米中間で政治摩擦が高まった時期にも、アメリカ財界は政府の方針に口を挟むことがなかった例を引き、「これこそ『企業の社会的責任』というものです」と断じた上で、靖国問題よりはるかに難しい問題は、「東シナ海の中間線問題であるのを忘れてはなりません」と指摘している。
しかし、藤野氏はなにしろ「日本は中国の属領たるべし」の提唱者だから、この議論には加わらない。
≪鳥居氏による重大な指摘≫
この座談会より、読者にはっきり展望を与えるのが鳥居民氏と金美齢氏の対談(正論十一月号)である。
この対談のなかで、鳥居氏は本年七月十二日付の人民日報に載った任仲平氏の論文に注目し、この論文をきわめて重視している。
「任仲平」というのは個人の筆名ではなく、論説委員、寄稿家のグループ名のようだ、という。
鳥居氏によると任仲平論文は、中国は現在一千ドル程度に過ぎない国民一人当たりの年間所得を向こう二十年間で三千ドル程度まで引き上げる必要があると主張し、中国にとっていま「もっとも大事なことは『穏定』を維持すること」だと説いている。
「穏定」の意味について鳥居氏は、「敵対的な外交、緊張政策、恫喝(どうかつ)から始まる恐れのある戦争、それらの対極にあるところの平和」のことであると解説しているが、背景には二十年後を境に人口がピークアウトし、以降急速に進むとみられる中国の超老齢化社会の到来があるという。
鳥居氏は、「この増え続ける老齢人口を扶養していく経済負担は大変です。現在でも膨大な数の農村の人びとは医療保険、年金制度とは無縁です。都市人口の七割が決して十分とはいえない社会保障の恩恵を受けているだけ」と指摘、「向こう二十年のあいだが、専門家が語るとおり、中国が先進国になることができるか、できないか、最後の機会となる」と述べている。
≪政治最優先の国是はどこに≫
十二月二日付産経新聞によると、米国の「中国軍の将来」なるセミナーで、二〇〇六年の台湾の憲法改正開始時点で、中国の軍事力による台湾進攻の危険性が最も高まるという予測がなされた、と古森義久氏が報じている。
巨大人口の超高齢化という大きな国内問題を控えつつ、軍部の台湾進攻を抑えられない中国政府の愚かさも極まれりといえる。
大体、「政治最優先」が中国の国是だったはずではないか。
中国にとって残る歳月は二十年しかない。台湾進攻などもってのほかで、「安定圧倒一切」(安定がすべてに優先する)でなければならない。鳥居、金対談もその方向に収斂していくのである。
中国はこの「余命二十年」問題を正面から通視すべきだ。
(ふかだ ゆうすけ)
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