(日本李登輝友の会メールマガジン)
与党陣営の得票率の伸びに台湾の民意を見た
連戦主席の「中華民国の勝利」や「新しい民意」説は「空宣言」
台湾の立法委員選挙の結果が判明した。戦前の予想に反して、与党の民主進歩党(民進党)が80議席から89議席へ増やしたのにもかかわらず、台湾団結連聯(台聯)の票が伸びず現状維持の12議席にとどまり、総計101議席で過半数の113議席に届かなかった。
一方、野党陣営は中国国民党が66議席から79議席に増やし、親民党が44議席から10議席減らして34議席に甘んじたものの、新党を加えて過半数を越える114議席となった。
【台湾立法院選挙結果・各政党の得票率と当選者数】
政党名 得票率 当選者数
民主進歩党 37.98% 89
中国国民党 34.90% 79
親民党 14.78% 34
台湾団結連盟 8.28% 12
無党団結連盟 3.86% 6
新党 0.13% 1
その他 4
各紙の報道では、「中国とのトラブルを嫌う中道層の離反を招いた」(朝日)とか「急激な台湾化を懸念する民意のバランス感覚が働いた」(読売)、「新憲法施行など陳氏の進める政治体制の「台湾化」は見直しを迫られそうだ」(共同)といった見方が主流のようだ。
中国国民党の連戦主席も「中華民国の勝利だ。新しい民意を示した」と宣言したが、果たしてそうだろうか。
確かに、野党陣営は過半数を越えた。しかし、得票率をみると、まったく横這いなのであり、逆に与党は確実に伸ばしていた。
前回の2001年の投票率は、民進党が33.4%、台聯が7.8%、総計41.2%。一方、中国国民党は28.6%、新党は2.6%、親民党は18.6%、総計49.8%。
では、今回の得票率はというと上記のように、与党陣営は46.26%と5.06%も増やしているのに対して、野党陣営は49.81%と0.01%しか伸びず、まったくの横ばい状態だった。
では、なぜ与党陣営は得票率を伸ばしたのにもかかわらず、議席数が伸びなかったのかといえば、中選挙区の戦い方において野党の方が長けていたからだったといえよう。
(略)
(もともとそういう支持層なのだから、戦術に入れてない方ががまずいわなw)
要するに、中国国民党の勝利は選挙戦術によるものだった。台聯候補が高得票にもかかわらず次点にとどまったことも、同様の理由が大きいだろう。
確かに、朝日などが見るように「中国とのトラブルを嫌う中道層の離反」や「急激な台湾化を懸念する民意」も働いたであろうが、台湾住民の民意は台湾新憲法制定や台湾正名を掲げた与党を支持する方向で着実に伸びていたのである。
それ故、議席数は伸ばしたものの野党陣営の得票率に変化はないのであるから、共同通信の「『台湾化』は見直しを迫られそうだ」という指摘は得票率を無視した、世論をミスリードするものであり、連戦主席の「中華民国の勝利」や「新しい民意」説もまたまったく説得力を欠いた「空宣言」といっても過言ではない。
いずれにせよ、台湾の民意は確実に台湾化に向かっている。李登輝前総統はこの選挙結果を受け「努力を続けて欲しい」と語ったというが、まさに台湾アイデンティティが高まる傾向は変わっていないのである。
台湾の民主主義化の流れは、もう誰にも止められない。中国国民党でさえ「愛台湾」を唱えざるを得ないのだ。
では、陳水扁政権に与えられた課題はなにかといえば、今までの少数与党体制という「ネジレ」を覆せなかったことによる厳しい議会対応である。しかし、日本でも村山首相をトップに据えた「ネジレ現象」を覆したのは国民の力だったのである。次回の2008年の総統選挙と立法委員選挙のときこそ台湾の真価が問われるのである。
(略)
(太田述正メルマガ)
(略)
今回の総選挙の投票率が史上最低の59.16%であったところにあります。
これは浮動票の多い(野党側)青陣営支持者で投票に行かなかった者が多数いたことを意味します。
このことと、最も中共寄りである親民党が前回の総選挙の時に比べて12議席も減らして34議席であったこと、逆に最も台湾「独立」志向である台湾団結連盟もまた1議席減らして(?)12議席であったこと、を合わせ考えると、台湾の浮動有権者で、台湾国内の混乱を招くとともに中共の反発と米国の懸念を招いてきた台湾政界の二極分化状況に嫌気が差した人々がかなりいる、と見ることができます。
そうだとすると結果論になりますが、陳水扁総統として、かねてから主張してきた憲法改正の旗印を下ろす必要こそなかったものの、選挙期間中に「中国」とか「中華」といった名前の政府系企業を「台湾」に改称させるとぶちあげたことは、米国政府の不快感表明を招いたこともあり、失敗だったというべきでしょう。
興味深いのは中共の対応です。今まで選挙のたびに緑陣営への脅しを繰り返してきた中共政府は、それが逆効果であったことを自覚したか、今回は完全に沈黙を保ち、選挙が終わってからも、12日夕刻時点で何の表明もしていません。
しかし、(当然政府の意向を汲んで)同国の中央テレビ(CCTV)が「台湾の選挙結果は現在の政治当局に不満を抱く台湾の民意を代表したものだ・・台湾の民衆は台湾の選挙文化に失望しており、積極的に選挙に参加していない・・人々は現在の台湾当局がわざと台湾内の対立や分裂を激化させていることに嫌気がさしている」と報じたことは注目されます。
これは客観的かつ「妥当」な論評であるだけでなく、選挙結果を「民意」のあらわれとしていることは、選挙(制度)を評価している、とも受け止められるからです。
やはり、中共の全権を掌握した胡錦涛は、対日政策に引き続いて台湾政策も転換しようとしている、と私には思えてなりません。
中共に面子を失わせることなく政策転換を行わしめる猶予を与えたという意味では、今回の選挙結果は、巧まずして最善の結果であった、と言えるのかもしれません。
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