「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成16年(2004)12月19日(日曜日) 

「サンドイッチ型産業構造」から「ドーナツ型産業構造」へ

台湾経済の変質は、「エンジニアが空洞化」という本質的な危機を露呈

嘗て台湾経済の特徴を「サンドイッチ型である」と自ら台湾の産業人は銘々していた。

要するに日米のハイテクと安い労賃金で追い上げるマレーシア、フィリピン、インドネシア諸国に「挟まれて」(sandwitched)、四苦八苦する台湾の経済ジレンマを象徴していた。

その後、台湾はアメリカから留学生が帰国し始め、日本を猛追するハイテク産業を育てた。新竹にみられる「ハイテクパーク」には高度コンピュータ産業が蝟集し、とくに半導体、集積回路での躍進が顕著となる。

台湾は空前の繁栄に酔った。80年代後半から90年代央にかけてである。

台北の副都心にはアジア最大の「TAIPEI・101」という高層ビルがそびえたっている。101階の高層ビルは周辺を睥睨し、物見遊山の観光客を含め、連日、空前のにぎわいを見せている。

上海の最高層の「金茂ビル」は88階。いまや台北にその地位を譲った。

かくして時代は流れ、状況は百八十度変わった。

台湾の所得が激増し、町はピカピカのビルが建ち並び、マイカーが疾駆し、ファミリー・レストランが繁盛し、回転寿司も超満員。若いひとは日米に夥しく留学する。

 労働賃金が急上昇した。

このため中国大陸へ台湾企業が陸続と進出し、いまや六万社、駐在しているエンジニアとマネージャーが70万人から百万人

投資金額は、おそらく1000億ドルを超える(台湾の公式統計は400億ドル内外だが香港経由、米国の台湾企業現地法人経由などで、その二倍から三倍のカネが出ていった)。

李登輝前総統の流れを組む人達(たとえば呂秀蓮・副総統ら)は、これを「愚かな行為、いずれ人質となる」と強く牽制してきたのだが、商売人は、何処吹く風。

そして台湾経済は再び、歪つな産業構造を形成する。製造に必要なエンジニアが台湾に不在となり、大学卒のエンジニアが大陸に派遣され、とどのつまりは基本的製造業が、台湾国内で「空洞化」したのである。

この異形な産業構造を矯正するために、今後は産業的な改編が必要であろう。


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